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本草歳時記 12 アケビ

アケビ

猛烈に暑かった夏が終わり、やっと涼しくなった。身体も随分と楽である。
実りの秋を迎え様々な果物も出回り始めた。暑い夏に加え台風の到来も少なく、質量ともに恵まれたのではないだろうか。里山ではそろそろ熊出没の話が出始めている。食料となるドングリの出来が悪いようである。

 

この季節、里山の雑木林を歩くとパックリと割れた卵より一回り大きな紫や茶色の果実を目にする。アケビの実である。山間部では人間ばかりでなく猿や鳥など、勿論、熊にとっても御馳走であるに違いない。実には種を包むように乳白色のジェリーが詰まっていてとても甘い。同じ種類にムベがあるが、葉がアケビよりも大きく庭木として植えられ、東京でもこの時期紫色の実を付けたものを見かける。最近ではアケビ、ムベ共に商品として市場に出回っているようである。
職場のある四ツ谷にも実はアケビが沢山自生している。しかし残念ながら果実を目にしたことはない。というのも年に数回雑草の刈り取りを行うため刈り取られて実を結ぶまで大きく成長することができないだと思う。でも春先はツルを長く伸ばして一生懸命繁茂しようとしている。残酷にも私はそのツルサキを摘み取りご相伴にあずかる。知る人ぞ知る春の山菜である。

 

さて、漢方で用いるのはアケビの茎・ツルの部分である。木通(もくつう)・通草(つうそう)と呼ばれ、身体内部の抜けにくい場所に滞った熱や毒を外へと導き出す働きがある。泌尿生殖器の病気である膀胱炎や膣炎などを治療する処方に用いられ、昔は梅毒の治療薬にも良く使われた。またオデキなど皮膚疾患を治す処方にも使われる。さらに手足がひどく冷えてシモヤケを起こすような女性の体質を改善する処方に使われたりもする。
以前友人の行きつけの小料理屋を訪れた時に、秋田出身の女将が「田舎から送られてきたんだけど、これわかる?」と絶対に知らないだろうという顔でおひたしを出してきた。「アケビだろ?」とさりげなく答えると、「ええ、どうして知ってんの?」と驚いたので得意になったのだが、実は私も驚いた。そのツルの立派なこと!さすが東北大自然の恵みであった。

 

コロナの影響で多くの人達がリモートワークに携わる中で自然環境に恵まれた地域へ移り住む動きが出ているようであるが素晴らしいことだと思う。豊かな自然環境の中で生活できれば心身共に健康になるに違いない。これだけ大きなストレスは人間の生活形態にも何らかの変化を及ぼすはずである。この停滞した状況の中で、アケビの薬効のように社会を良き方向へ導き出すのは一人ひとりの世界観や価値観ひいては生き方の転換なのかもしれない。私はリモートするわけにいかないので東京で畑をやりながら小さな自然を探して楽しみます。

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