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本草歳時記 9 ミカン

 

炬燵に入ってテレビを見ながらミカンを食べる。冬の団欒を思わせる懐かしい光景である。子供の頃冬になると父親が大きな段ボールでミカンを買ってくるのが習わしであった。一日に優に10個は食べていた気がする。しかし中身を食べて皮は捨てていた。家によっては皮を捨てずに天日で乾かし風呂に入れてその爽やかな香りを楽しんでいたようで、よくベランダに干してあるのを見かけた。

 

実は漢方ではこの皮が用いられ橘皮(きっぴ)と呼ばれる。胃を温め消化を助け、シャックリを止め、胸中のうっ滞を除くなどの働きがある。柑橘系の爽やかな香りから溜まったものをすうーと取払う作用が想像できる。橘皮を長い年月をかけて熟成したものは陳皮(ちんぴ)と呼ばれ黒みがかり芳醇な香りを放つ。食材としても珍重され、七味唐辛子に使われることも多い。以前広州の清平薬材市場を訪れた時にその値段の高さに驚いた。陳皮を用いる処方もたくさんあるが、今ではほとんどが橘皮と変わらないくらい若い物が使われる。ミカンは青い果実の皮も生薬として使う。その名の通り青皮(せいひ)と言う。やはりお腹の中に固く滞った物を払う働きがあり、数々の処方に取り入れられている。

 

先日テレビでフードロスの番組を見た。毎日膨大な量の食物が製造過程、賞味期限切れ、食べ残しなどで捨てられている。食べ物は本来命を繋ぐ大切なものである。我々は植物、動物の命をいただいて生きている。人々が食べ物も排泄物も決して無駄にはしない循環型の生活を営んでいた時代もあった。食べ物を捨てることは命を無駄にすることでもある。今の時代の危うさを感じずにはいれない瞬間であった。

 

週に二度ほど近くの銭湯に行くことにしているが、数日前ミカンの仲間である大きな文旦が二十個ほど湯船にぽかぽか浮かべてあった。何だかとても幸せな気分になった。

 

せめてこれからはミカンの皮は捨てずにお風呂に浮かべようか、それとも時間をかけて陳皮でも作ろうか?
もちろん無農薬、ノンワックスのもので。

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