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游々 生薬街   ホーチミン(ベトナム)2019

今年初めてベトナムを訪れた。ベトナムと言うとまず頭に浮かぶのがベトナム戦争である。武器大国アメリカをゲリラ戦を駆使して退け勝利した国である。

 

首都ホーチミン市を訪ねたのは8月下旬から9月上旬。街に入り最初に驚かされたのはバイクの数の多さであり、全部と言っていい程小型スクーターだ。信号もほとんど無く、けたたましくクラクションを鳴らしながら巧みに他車をかわし疾走する。二人乗りは当たり前、中には家族4人の乗ったバイクもある。乗用車の数は圧倒的に少なく遠慮がちに走っている。ベトナムは現在急速に発展している。あたかもその勢いをバイクの轟音に響かせているかのようだ。

 

かつてこの国は中国の支配下にあり、漢の時代からおよそ千年にわたってその影響を受けた。市には華人が多く住むチョロンと呼ばれる地区がある。そしてそこには生薬を扱う店や漢方薬局が集まる一画があるのだ。
日曜日にもかかわらず一軒の漢方薬局は大勢のお客さんが薬の受け取りを待って大忙し、評判の良い店には人が集まるのであろう。生薬問屋では、道端に広げた生薬の選別、袋詰めで人々が甲斐甲斐しく働いている。店頭には見たこともない民間薬と思われる物が結構ある。

チョロン薬店店頭

チョロン薬店店頭

そして勿論置いてありました。ベトナム産の生薬と言えば何といっても桂皮(ケイヒ)、である。樹皮を乾燥させたもので、香辛料シナモンとしても有名である。ベトナムNO.1と呼ばれる商品は主成分シンナムアルデヒドが濃密で香り高い。

桂枝

桂皮は極めて重要な生薬の一つであり、主に体表を温め侵入した風邪(ふうじゃ)を払う働きがある。有名な「葛根湯」(かっこんとう)は「桂枝湯」(けいしとう)をベースに組み立てられた処方であるが、「桂枝」は桂皮のことで、この「桂枝湯」は最も重要な漢方の原典「傷寒論」で最初に登場する処方である。

 

ここは生薬関係の店が決して多い訳ではないが、観光客相手でもなくしっかり地元に根付いた漢方街であった。

 

ホーチミン市には「ベトナム伝統医学博物館」があり、今回の旅のもう一つの目的がそこを訪れることであった。まずはエレベーターで最上階の6階に上がり、そこがベトナム医学の起源という設定。出土陳列された遺品の中にはリンガム(男性器)があり、当時の人の像も一寸インド風でインドの影響を感じさせる。階を下りるに従い、歴代の名医の系統図、扱われた生薬の絵・実際のサンプル、ベトナム人をモチーフにした可愛い経絡図、扱われた包丁・薬研(やげん、粉にする器具)・天秤などの道具、百味箪笥(薬箱)などが展示されている。全体が系統立ててきちんと整理され、展示品一つ一つが味わい深く、とても親しみやすい空間となっている。

日本と同様に古代中国医学を伝承し、漢方薬・鍼灸が行われてきたんだなあと言う印象を受ける。あの圧倒的戦力を持つアメリカの隙を突く巧みな智慧を持つ人々の国ベトナム。きっと漢方医学も地元の生薬を取り入れながら上手に受け継いでいるのであろう。

 

4日と言う短い滞在であったがまたひとつ漢方で繋がっている国に出会えた気がした旅だった

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