游々~漢方街3 香港・広州(中国) 2018
今年は香港の香港島にある漢方街、そして広東省広州市にある清平中薬材業市場を訪ねてみました。
8月30日、朝滞在ホテルから地下鉄を乗り継ぎ上環駅に到着。目指すは永楽街とその先の高陞街。上環市場を過ぎ立派な店構えの乾物屋が立ち並ぶ永楽街に着いたが生薬を扱う店は少ない。続いて高陞街に出た。台北の迪化街とは比べ物にならないほど規模が小さく生薬関係の店はぽつりぽつり。しとしとと降る雨と相まって私の心も寂しい。その時意外なものが、ガラス越しに羚羊角(れいようかく)発見。初めて目にしたが、主にモンゴル方面に生息するサイガ(カモシカの一種)の角で、かつては日本でも使われていたが、現在ではお目見かかることはない。精力増進、筋骨強化、脳卒中、癲癇(てんかん)の薬として数々の処方に用いられた。来た甲斐があった。
8月31日、香港から東鐡綫(鉄道)で羅湖へ。ここまでが香港で、ここから国境を超えるかのように出国手続き、検疫、税関、入国手続きを経て中国本土側の深圳(しんせん)に入る。「一国二制度」を生で体験。深圳から広州東まで鉄道で2時間ほど、広州東で地下鉄に乗り換え清平中薬材業市場のある黄沙駅へ。改札を出て地上階へ、前にある道路を左へ折れるとすぐに広大な市場が広がる。様々な生薬や乾物を扱う店が所狭しと軒を連ねている。一通り見て歩くだけでも数時間は必要だ。初めて見る本場の漢方市場に感激して歩き廻っていると腹が減ってきた。市場を外れると普段の人々の生活があった。東南アジアのどこにでもあるような小さな田舎町だ。通りをぶらぶら歩き地元の人達が利用する小さな食堂へ。イカと魚のつみれ団子の入った麺を注文。店内は満席、おまけに出前もやっているようで忙しそう。言葉が通じない面倒な客だが親切に対応してくれた。安くて美味かった。昼飯を済ませ再びぶらぶら歩いていると生きたサソリを売っている店に何軒か出くわす。いつか賞味してみたい食材である。ちなみに蠍(さそり)は古典「本草綱目」によると、脳卒中、てんかん、耳聾、婦人の帯下(おりもの)などに効果があると記されている。さらに進むと市場の最も奥まった一角にある古い建物に出た。何やら怪しげな雰囲気が漂う。そこには昼飯前に見てきた小ぎれいな店々とは異なり、いにしえの時代にタイムスリップしたかのような漢方のディープな世界が広がっていた。虫、蛇、トカゲ、化石・・・。ゾクゾク~。自然界にあるものはすべて糧となり薬となる。古代中国の人々の自然と一体な深淵なる智慧に改めて触れた気がした。生まれた時から何の疑いもなくどっぷり漬かってきた西洋の合理的な世界観とは異なる東洋の神秘的な世界観がそこには漂っていた。日本から来たと言うと珍しいのだろう、おじさんおばさん達がとても喜んでくれた。
また来よう中国。ディープな世界を求めて、再見。